平均対応時間(AHT)とは
概要
Average Handling Time の略で、1 件の問い合わせ対応にかかる平均時間。通話時間、保留時間、後処理時間を含む。コールセンターやカスタマーサポートの効率を測る基本指標。

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平均対応時間(AHT)とは、Average Handling Time の略で、1 件の問い合わせ対応にかかる平均時間を示す指標です。コールセンターやカスタマーサポートの効率を測る基本的な KPI として広く活用されています。
AHT の構成要素
AHT は、以下の 3 つの要素で構成されます。
| 要素 | 説明 |
|---|---|
| 通話時間(Talk Time) | 顧客と実際に会話している時間 |
| 保留時間(Hold Time) | 通話中に顧客を保留にしている時間 |
| 後処理時間(ACW) | 通話終了後の記録作業などの時間 |
ACW は After Call Work の略で、通話後のデータ入力、記録、エスカレーションなどの作業時間を指します。
AHT の計算方法
AHT は以下の計算式で算出します。
計算式: AHT =(総通話時間 + 総保留時間 + 総後処理時間)÷ 総対応件数
例えば、1 日の実績が:
- 総通話時間: 500 分
- 総保留時間: 50 分
- 総後処理時間: 100 分
- 総対応件数: 100 件
AHT =(500 + 50 + 100)÷ 100 = 6.5 分
AHT の業界平均
AHT の業界平均は、業種や問い合わせ内容によって大きく異なります。
| 業界・内容 | AHT の目安 |
|---|---|
| 通信販売(受注) | 3〜5 分 |
| 金融(一般問い合わせ) | 5〜8 分 |
| テクニカルサポート | 8〜15 分 |
| IT ヘルプデスク | 10〜20 分 |
| クレーム対応 | 10〜15 分 |
チャットサポートの場合は、複数の顧客を同時に対応できるため、単純な比較は難しくなります。
AHT が重要な理由
AHT が重視される理由は以下の通りです。
運営コストへの影響:
- AHT が長いほど人件費がかかる
- 同じ人数で対応できる件数に影響
- 人員配置の計画に必要
サービスレベルへの影響:
- AHT が長いと待ち時間が増加
- 顧客の不満につながる
- SLA の達成に影響
効率改善の指標:
- 改善活動の効果測定
- ベンチマークとして活用
- 問題箇所の特定
AHT を短縮する方法
AHT を短縮するための具体的な施策を紹介します。
通話時間の短縮:
- オペレーターのスキル向上
- 効率的な会話の進め方
- 適切なヒアリング技術
保留時間の短縮:
- ナレッジベースの整備
- システムの検索性向上
- 必要情報への素早いアクセス
後処理時間の短縮:
- 入力項目の簡素化
- テンプレートの活用
- 自動入力機能の導入
AHT 短縮の注意点
AHT を短縮する際の注意点をまとめます。
品質との両立:
- 短縮を急ぐあまり品質が低下するリスク
- 顧客満足度とのバランス
- 一次解決率(FCR)への影響
現実的な目標設定:
- 無理な目標は逆効果
- 段階的な改善
- 問い合わせ内容別の目標
オペレーターへの配慮:
- 過度なプレッシャーを避ける
- サポート体制の整備
- 適切な評価基準
AHT と一次解決率の関係
AHT と FCR(一次解決率)は、しばしばトレードオフの関係になります。
| 傾向 | 結果 |
|---|---|
| AHT を短くしすぎる | FCR が低下、再問い合わせ増加 |
| FCR を重視しすぎる | AHT が長くなる |
バランスの取り方:
- 「総対応コスト」で評価
- 再問い合わせも含めた総時間で判断
- 顧客満足度を指標に加える
チャットボットと AHT
AI チャットボットは、AHT の短縮に貢献します。
| 効果 | 詳細 |
|---|---|
| 簡単な問い合わせを自動対応 | 有人対応の件数を削減 |
| 事前情報収集 | 有人対応開始時の確認時間を短縮 |
| FAQ への誘導 | 自己解決を促進 |
| 定型回答の提供 | オペレーターの検索時間を削減 |
チャットボットが対応する範囲を広げることで、有人対応の AHT だけでなく、全体の対応効率を向上させることができます。
AHT の分析方法
AHT を詳しく分析するためのアプローチを紹介します。
要素別分析:
- 通話時間、保留時間、後処理時間それぞれの内訳
- どの要素に改善余地があるか
セグメント別分析:
- 問い合わせ種別: 質問、トラブル、クレーム
- オペレーター別: スキルレベル、経験年数
- 時間帯別: ピーク時、閑散時
- 顧客属性別: 新規、既存
時系列分析:
- 日次、週次、月次の推移
- 改善施策の効果測定
- 季節変動の把握
AHT に影響する要因
AHT に影響を与える主な要因をまとめます。
オペレーター要因:
- 経験・スキルレベル
- 製品知識
- コミュニケーション能力
- モチベーション
システム要因:
- CRM の使いやすさ
- ナレッジベースの検索性
- システムの応答速度
- ツール間の連携
プロセス要因:
- 対応フローの複雑さ
- 承認・確認の手順
- エスカレーションルール
- 後処理の手順
問い合わせ要因:
- 問い合わせの複雑さ
- 顧客の状況(急いでいる、怒っている)
- 必要な調査・確認の量
AHT の目標設定
AHT の目標を設定する際のポイントを紹介します。
現状の把握:
- 現在の AHT を正確に測定
- 要素別、セグメント別に分析
- ベンチマークとの比較
適切な目標値:
- 現実的で達成可能な値
- 品質を維持できる範囲
- 段階的な改善目標
目標の共有:
- チーム全体で共有
- 目標の根拠を説明
- 達成に向けたサポート体制
まとめ
平均対応時間(AHT)は、1 件の問い合わせ対応にかかる平均時間を示す基本指標です。通話時間、保留時間、後処理時間の合計で構成され、運営コストやサービスレベルに直接影響します。
AHT の短縮には、オペレーターのスキル向上、ナレッジベースの整備、システムの改善が効果的です。ただし、品質を犠牲にした短縮は逆効果であり、一次解決率(FCR)とのバランスを意識することが重要です。
チャットボットを活用することで、簡単な問い合わせを自動対応し、有人対応の効率を高めることができます。AHT を要素別、セグメント別に分析し、改善ポイントを特定して継続的に効率化を図りましょう。