インシデント管理とは
概要
サービスの中断や品質低下を引き起こす事象(インシデント)を検知し、迅速に復旧させるためのプロセス。IT サービスマネジメントにおける重要な管理プロセスの一つ。

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インシデント管理とは、サービスの中断や品質低下を引き起こす事象(インシデント)を検知し、可能な限り迅速にサービスを復旧させるためのプロセスです。IT サービスマネジメント(ITSM)における基本的な管理プロセスの一つとして位置づけられています。
インシデントとは
インシデントとは、サービスの正常な運用を妨げる、または妨げる可能性のある事象のことです。
インシデントの例:
- システムの停止、障害
- アプリケーションのエラー
- ネットワーク接続の問題
- パフォーマンスの著しい低下
- セキュリティ上の問題
- ユーザーがサービスを利用できない状態
インシデント管理の目的
インシデント管理の主な目的は以下の通りです。
サービスの迅速な復旧:
- ダウンタイムの最小化
- ビジネスへの影響を抑える
- 顧客への影響を最小限に
標準化された対応:
- 一貫した対応プロセス
- 担当者による品質のばらつき防止
- 効率的なリソース配分
記録と分析:
- インシデントの記録・追跡
- 傾向分析による予防策
- 改善活動への活用
インシデント管理のプロセス
インシデント管理の一般的なプロセスを紹介します。
| フェーズ | 内容 |
|---|---|
| 検知 | インシデントの発生を検知・報告 |
| 記録 | インシデント情報を記録 |
| 分類 | 種類、影響度、緊急度を判定 |
| 優先度付け | 対応の優先順位を決定 |
| 診断 | 原因の特定、解決策の検討 |
| 解決 | 復旧作業の実施 |
| クローズ | 解決確認、記録の完了 |
インシデントの優先度
インシデントは、影響度と緊急度に基づいて優先度を決定します。
影響度(Impact):
- 高: 多数のユーザーに影響、主要機能が停止
- 中: 一部のユーザーに影響、機能制限あり
- 低: 少数のユーザーに影響、軽微な問題
緊急度(Urgency):
- 高: 即座の対応が必要、業務が停止
- 中: 早急な対応が必要、業務に支障
- 低: 対応は必要だが緊急性は低い
優先度マトリクス例:
| 影響度\緊急度 | 高 | 中 | 低 |
|---|---|---|---|
| 高 | P1(最優先) | P2(高) | P3(中) |
| 中 | P2(高) | P3(中) | P4(低) |
| 低 | P3(中) | P4(低) | P5(計画的) |
インシデント管理とカスタマーサポート
カスタマーサポートにおいてもインシデント管理の考え方は重要です。
カスタマーサポートでの適用:
- 顧客からの障害報告を「インシデント」として管理
- 影響範囲と緊急度で優先度を判断
- 定められたフローに従って対応
- 解決までの経過を記録
メリット:
- 対応漏れの防止
- 対応品質の標準化
- SLA の達成管理
- 傾向分析による改善
インシデント管理と問題管理の違い
インシデント管理と問題管理は、しばしば混同されますが、目的が異なります。
| 項目 | インシデント管理 | 問題管理 |
|---|---|---|
| 目的 | サービスの迅速な復旧 | 根本原因の特定と恒久対策 |
| 時間軸 | 短期(即時対応) | 中長期(再発防止) |
| 対象 | 個別のインシデント | インシデントの根本原因 |
| 成果 | サービス復旧 | 恒久的な解決策 |
インシデント管理は「とにかく復旧させる」ことが目的であり、根本原因の解決は問題管理で行います。
インシデント対応のエスカレーション
インシデント対応におけるエスカレーションの仕組みを紹介します。
機能的エスカレーション:
- 一次対応で解決できない場合
- 専門知識を持つチームへ移管
- 例: ヘルプデスク → テクニカルサポート → 開発チーム
階層的エスカレーション:
- 重大なインシデントの場合
- マネージャーや責任者への報告
- 例: 全社に影響する障害 → CTO への報告
時間ベースのエスカレーション:
- 一定時間内に解決しない場合
- 自動的に上位レベルへ通知
- 例: P1 インシデントが 30 分未解決 → 自動エスカレーション
インシデント管理ツール
インシデント管理を支援するツールについて紹介します。
ツールの主な機能:
- インシデントの登録・追跡
- 優先度の自動判定
- エスカレーションの自動化
- SLA の監視・アラート
- レポート・分析
チャットボットとの連携:
- インシデント報告の受付
- ステータスの問い合わせ対応
- 自動的なチケット作成
- 顧客への進捗通知
インシデント報告書
重大なインシデントが発生した場合、報告書を作成することが重要です。
インシデント報告書の項目:
- インシデントの概要
- 発生日時、検知日時
- 影響範囲(ユーザー数、機能)
- 時系列の対応経緯
- 原因(判明している場合)
- 暫定対策、恒久対策
- 再発防止策
- 教訓
報告書は、組織内での情報共有と、将来の改善に活用します。
インシデント管理の KPI
インシデント管理の効果を測定するための KPI を紹介します。
- 平均復旧時間(MTTR): インシデント発生から復旧までの平均時間
- 平均対応時間: インシデント報告から対応開始までの時間
- 一次解決率: 最初の対応で解決できた割合
- エスカレーション率: 上位レベルにエスカレーションされた割合
- SLA 達成率: SLA 内で解決できた割合
- 再発率: 同じ原因のインシデントが再発した割合
チャットボットとインシデント管理
AI チャットボットは、インシデント管理においても活用できます。
| 活用シーン | 効果 |
|---|---|
| 障害報告の受付 | 24 時間受付、必要情報の収集 |
| ステータス確認 | 対応状況をリアルタイムで回答 |
| 既知の問題の案内 | 同様の問題への回答を自動化 |
| 回避策の案内 | 暫定的な対処方法を案内 |
チャットボットが初期対応を行うことで、サポートチームは重大なインシデントへの対応に集中できます。
まとめ
インシデント管理は、サービスの中断や品質低下を迅速に復旧させるためのプロセスです。検知、記録、分類、対応、クローズという一連のフローを標準化することで、効率的かつ一貫した対応が可能になります。
カスタマーサポートにおいても、インシデント管理の考え方を適用することで、対応品質の向上と SLA の達成につながります。優先度に基づいた対応と、適切なエスカレーションの仕組みが重要です。
チャットボットを活用することで、インシデント報告の受付やステータス確認を自動化し、サポートチームの負荷を軽減できます。インシデント管理を適切に運用し、サービス品質の維持・向上を目指しましょう。